6.2 クリエイティブの課題

 インターネット広告というとテクノロジーやマーケティングの側面が注目されがちだが,クリエイティブについても言及しておきたい。強力なメディアを利用したとしても,そこに的確なクリエイティブがなければメッセージは伝わらないからだ。

 インターネット広告のクリエイティブには,まだまだ潜在的な可能性があるだろう。その可能性の芽を摘んでしまっていたのは,過度なクリック至上の考え方だ。何としてもクリックさせようとするようなギミックに凝った広告によって,不快感を覚えたことがある利用者は少なくないはずだ。クリエイティブの制作にあたっては,クリックによるトラフィック効果だけでなく,広告インパクトが意識にもたらすインプレッション効果も考慮すべきだ。ブロードバンド化によってリッチなクリエイティブが展開できるようになればなおさらだ。また,インプレッション効果を追求するのであれば,他メディアとの連動性や統一性も配慮すべきだ。そのためには,インターネット広告の制作を他メディアから切り離さず,すべてのメディアの制作を同一のクリエイターが監修するとよい。タレントなどの権利者との契約にあたっては,インターネットでも利用できるような条件で合意しておくことが望ましい。

 インターネットとそれを取り巻く環境の変化は,インターネット広告のクリエイティブにも変化をもたらしてきた。例えば,フラッシュのアニメーションの技術はインターネット広告の表現を飛躍的に向上させた。フラッシュがバージョンアップするたびにクリエイティブの可能性は広がっている。また,技術的には可能であったストリーミング広告が商品化されたのは,ブロードバンドの普及によるものだ。そこでクリエイターに求められるのは,できることを正確に理解したうえで,すべきことを見極めるセンスだ。例えば,フローティング広告は表示領域と表示秒数が規定されている。表示領域に占める広告オブジェクトと透過スペースの比率や適切な展開時間は,規定の範囲でクリエイターが判断することだ。広告としてのインパクトとユーザビリティーの双方を確保するバランスが求められる。

 テレビ広告や新聞広告を制作してきたクリエイターは,インターネット広告の不慣れな技術的制約に戸惑うかもしれない。しかし,他メディアで蓄積してきた知見の一部は大いに活かせるだろう。逆に,インターネット広告を制作したことによって習得した考え方が,他メディアの広告を制作するうえでの発想を刺激するかもしれない。インターネットを含むクロスメディアコミュニケーションの成功は,クリエイティブに依存するところも大きい。

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