5.2 サーバーログによる効果測定

 インターネット広告の配信についてのデータは,広告配信サーバーにログとして記録される。インプレッションやクリックのデータはこのログを解析して引き出され,広告主に報告される。クッキー(cookie)が発行されていれば,ユニークユーザーを解析することもできる。クッキーはデータをコード化した小さなファイルで,広告配信とともにクライアントのハードディスクに記録されるものだ。クッキーは利用者の同一性を判断する目的で使用され,訪問履歴に応じて適切な広告を配信したり,フリークエンシーを制御したりする。また,クッキーとともに利用されることが多いのがウェブビーコン(web beacon)だ。ウェブビーコンはウェブバグ(web bug)とも呼ばれる。ウェブビーコンは通常は天地左右1ピクセル(シングルピクセル)の透明な画像で,ウェブページに埋め込むことによって閲覧行動を測定する。クッキーやウェブビーコンによって収集される情報は個人を特定できるものではないものの,一部のプライバシー擁護論者からは反発がある。インターネット協会の「電子ネットワーク運営における個人情報保護に関するガイドライン」は,クッキーにより個人情報を取得する場合には利用者の同意を得ることが望ましいとしている。

 アメリカのダブルクリックは1999年11月,カタログ販売業者から消費者の購買情報を蓄積しているアバカスダイレクト(Abacus Direct,http://www.abacusdirect.com/)を買収した。ダブルクリックがクッキーを通じて収集している匿名のオンライン情報とアバカスダイレクトが所有している非匿名のオフライン情報を,相互に照会するのが目的だった。しかし,プライバシーの侵害に当たるという強い批判を浴びたため計画は中止された。その後同社は,プライバシーチョイシーズ(PrivacyChoices,http://www.privacychoices.org/)というプライバシーについての情報提供サイトを立ち上げて,積極的に広報活動を行った。一方,ネットワーク広告配信会社で構成されるNAIは,告知,選択,アクセス,セキュリティの原則からなるプライバシー保護の自主規制を2000年7月に定めて,アメリカ連邦取引委員会と合意した。また,2002年11月にはウェブビーコンの使用についての指針も制定した。イギリスのIAB(Internet Advertising Bureau UK,http://www.iabuk.net/)は2003年6月,クッキーとプライバシーについてのウェブサイト(http://www.allaboutcookies.org/)を立ち上げている。

 ビデオリサーチインタラクティブ(旧社名はアドソリューションエックス)のインターネット広告第三者配信サービスは,クッキーやウェブビーコンを利用して,広告のユニークユーザー数やフリークエンシー,ポストインプレッション効果,ポストクリック効果を測定する。複数の広告枠に出稿すると通常は複数の広告掲載レポートが発行され,広告効果を同一基準で比較できなかったり重複を省いた分析ができなかったりする。同社の第三者配信によって複数の広告枠を統合的に管理すれば,それらの問題を解決できる。

 ポストクリック効果だけであれば,ビデオリサーチインタラクティブでなくても一般的なアクセス解析サービスで測定できる。アクセス解析の手法には,スクリプト方式(ウェブビーコン方式),サーバーログ方式,パケットキャプチャー方式がある。広告効果測定の目的でよく利用されるのは,ウェブページに計測用タグを埋め込んでおくスクリプト方式だ。ブラウザーがそのページを開くたびにスクリプトが計測用サーバーに信号を届ける。クッキーを利用した個人の識別,リアルタイムな集計を得意とする。短期間でも安価で利用できる。広告効果測定に特化したものとしては,ロックオン(http://www.lockon.co.jp/)やオプトのサービスが広く支持されている。一方,サーバーログ方式はアクセスログを解析するだけのため,複数のサーバーにまたがったウェブサイトの分析,セッションが切れたときの個人の識別,リアルタイムな集計ができない。パケットキャプチャー方式はスイッチングハブのミラーポートから信号を監視するため,複数サーバーに分散していてもすべてをリアルタイムで集計できるが,高額のため一般的ではない。

 ところで,各媒体社が公表しているユニークユーザー数などのデータは,その測定方法がまちまちなうえ,公査や認証を受けたものではないので注意が必要だ。新聞や雑誌の販売部数を公査するアメリカのABC(Audit Bureau of Circulations,http://www.accessabc.com/)は,1996年5月にABCi(ABC Interactive,http://www.abcinteractiveaudits.com/)を立ち上げて,ウェブサイトやインターネット広告の公査に取り組んでいる。同社は適正なログ解析を支援するために,スパイダーやロボットのリストを作成している。

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