2.3 電子メール広告

 電子メールによって配信される広告。メールマガジンやメールニュースと呼ばれるメールのコンテンツに挿入される5行の広告は,メールマガジン広告と呼ばれる。オプトインメール広告と呼ばれるのは,特定の情報カテゴリーについてのメールの受信を許諾(オプトイン)した利用者に対して,その情報カテゴリーの広告を配信するもの。利用者の年齢や性別などの属性で対象を絞り込んで配信するメール広告はターゲティングメール広告と呼ばれ,オプトインメール広告とは区別されている。バナー広告は利用者の広告掲載ページへの訪問を待つプル型の手法だが,電子メール広告は利用者の受信トレイまで届けられるプッシュ型の手法だ。広告に対する反応が配信直後に集中するという即効性も特徴のひとつだ。メーラーメーラー(MailerMailer,http://www.mailermailer.com/)の2008年下半期の統計によると,配信から2週間以内に開封されたメールのうち29.6%は配信から2時間以内に,74.5%は24時間以内に,84.3%は48時間以内に開封されている。

 電子メール広告は高度にターゲティングするほど無駄打ちが少なくなりクリック率が高まる。電子メール広告のクリック率はバナー広告を上回るのが一般的だ。メーラーメーラーが2008年下半期に配信したメールの平均開封率は12.52%,平均クリック率は2.80%だった。また,開封率が高めなのは月曜日から火曜日にかけてで,クリック率がもっとも高かったのは月曜日だった。件名が短かったり件名や本文をパーソナライズしてあったりするメールは開封率およびクリック率が高い。ウェブページと同じように画像や色などを使用できるHTMLメールのクリック率はテキストメールのそれよりも高い。HTMLメールの有効性については,ルート・コミュニケーションズ(http://www.rootcom.jp/)も明らかにしている。同社が2002年7月から9月にかけて実施した「HTMLメールとテキストメールの購買率比較についての調査」によると,HTMLメールによる購買率はテキストメールによるそれを上回っている。

 電子メール広告を正しく活用するうえでは,社会問題となっている迷惑メールについての理解が欠かせない。同意なしに送り付けられるメールはスパムと呼ばれ,受信者から強い反感を買う。1978年,ARPAネットのアメリカ西海岸ユーザーすべてに送付されたコンピューターの宣伝メールがスパムの起源らしい。スパムの問題は深刻化の一途だ。電子メールのセキュリティを提供しているシマンテック(Symantec,http://www.symantec.com/)やメッセージラボ(MessageLabs,http://www.messagelabs.com/)によると,世界を行き交うメールの約9割はスパムだという。

 スパムの問題が深刻になるにつれて,正当な電子メールマーケティングを育成していくための取り組みも活発になってきた。アメリカでは,2000年9月に発足したRECA(Responsible Electronic Communication Alliance,http://www.responsibleemail.org/)が,電子メールマーケティングのガイドラインの策定とその推進を目指した。IABは「倫理基準に適合した電子メールの保証」(IAB Ethical Email Guarantee)というガイドラインを2002年12月に発行した。電子メールリストの取得や使用についての6項目の倫理規定だ。NAI(Network Advertising Initiative,http://www.networkadvertising.org/)はスパムなどの問題を解決するため,2003年1月にESPC(Email Service Provider Coalition,http://www.projectlumos.com/)を発足させた。2003年10月には,IAB,ESPC,TRUSTe(http://www.truste.org/)が「電子メールマーケティングの誓約」(Email Marketing Pledge)を発行した。スパムを禁止したうえで商業目的のメールを送信できるケースを限定して,コンテンツのルールを規定したものだ。同月,AAAAとANAとDMA(The Direct Marketing Association,http://www.the-dma.org/)も共同で9項目のガイドラインを発行した。また,2003年12月にはスパムを規制する連邦法(CAN-SPAM Act,Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing Act)が成立して,2004年1月から施行された。しかし,ヘッダーを偽装することなく適切な受信拒否方法を用意するなどの条件を満たせばスパムを送信できるため,同法の有効性は限られている。スパムの抑止には法律と技術との連携が欠かせない。オープンウェーブシステムズ(Openwave Systems,http://www.openwave.com/)やインターネットイニシアティブ(http://www.iij.ad.jp/)などは,通信事業者間の協調,技術の研究,政策立案者の支援を目指して,2004年1月にMAAWG(The Messaging Anti-Abuse Working Group,http://www.maawg.org/)を組織した。2004年6月には,前年4月にヤフー(Yahoo!,http://www.yahoo.com/)やマイクロソフトが結成していたASTA(Anti-Spam Technical Alliance)が,送信者確認のための技術的方策を含むスパム対抗策を提言した。日本においても,迷惑メールの対策は十分とはいえないものの整備されつつある。経済産業省(http://www.meti.go.jp/)は「特定商取引に関する法律(特定商取引法)の一部を改正する法律」によって,総務省は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)」によって,2002年7月から迷惑メールを規制している。インターネット広告推進協議会は「電子メール広告に関するガイドライン」「モバイルメール広告の運用ガイドライン」「メール広告のパーミッション取得のためのガイドライン」を制定して,その遵守を呼びかけている。日本インターネットプロバイダー協会(http://www.jaipa.or.jp/)などが参加している迷惑メール対策連絡会(http://www.mcf.to/asc/)も,オプトインとオプトアウトについてのガイドラインを2003年9月に発表した。ヤフーとマイクロソフトはメールサービスの向上を図るため,2003年11月に迷惑メール撲滅連絡会を立ち上げた。

 電子メール広告を送付するときには,そのパーミッション(許諾)を必ず取得しておきたい。相手が顔見知りの顧客であっても,許諾がなければスパムと受け取られかねない。また受信者が許諾していても,許諾したことを忘れられていることがある。さらには,受信者が許諾したときに想定した受信内容や受信頻度と異なっても,スパムととらえられうる。したがってメール広告の配信にあたっては,許諾を得ていてもスパムと判断されることがあるとの前提に立ち,配信停止の方法を案内すべきだ。

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