1.2 インターネット広告とは
インターネットの利用者が増加するにつれて広告もそこに進出してきた。課金システムが確立されていないインターネットでビジネスをしようとしたとき,広告こそがもっとも現実的な手段だったといえよう。インターネットにおける広告は,インターネット広告またはオンライン広告と呼ぶのが一般的だ。インターネット広告という言葉は,狭義では有料メディアを介した商品やサービスなどの宣伝を意味する。広義では広報や自社サイトにおけるコミュニケーションも含まれる。
インターネット広告は,1994年10月27日のホットワイアード(HotWired,http://www.hotwired.com/)創刊に14社分のバナー広告が掲載されたのがはじまりとされている。アメリカでは,1996年4月にマイクロソフト(Microsoft,http://www.microsoft.com/)やインフォシークが立ち上げたIAC(Inretnet Advertising Council)を前身としてIAB(Internet Advertising Bureau,2001年4月にInteractive Advertising Bureauに改称,http://www.iab.net/)が設立され,インターネット広告の概念や広告取引の標準化が進行している。2001年3月,IABはAAAA(American Association of Advertising Agencies,http://www.aaaa.org/)とともに「インターネット広告の基本規約」(Standard Terms and Conditions for Internet Advertising)を発行した。2002年4月に発行された第2版では第三者配信についての規約なども追加され,ガイドラインとしての完成度が高まっている。IABの傍流としては,1998年8月にプロクターアンドギャンブル(P&G,http://www.pg.com/)の呼びかけでFAST(Future of Advertising Stakeholders,http://www.fastinfo.org/)が発足した。FASTは,AAAA,ANA(Association of National Advertisers,http://www.ana.net/),ARF(Advertising Research Foundation,http://www.arfsite.org/),およびIABからなる。FASTは1999年にヨーロッパでも結成されたが,2000年になるとアメリカにおける機能はDMC2(Digital Marketing and Commerce Coalition)に移管された。また1999年には,24/7メディア(現在の24/7リアルメディア,24/7 Real Media,http://www.247realmedia.com/)やダブルクリック(DoubleClick,http://www.doubleclick.com/)などオンライン広告会社十数社が,ASA(Advertising Standards Alliance)を組織している。
日本では1999年4月,日本広告主協会(http://www.jaa.or.jp/)がインターネット広告の課題や効果などを研究する専門組織としてWeb広告研究会(http://www.wab.ne.jp/)を発足,広告会社や媒体社はインターネット広告推進協議会(http://www.jiaa.org/)を発足させた。インターネット広告推進協議会は,広告倫理綱領,広告掲載基準ガイドライン,推奨広告サイズなどを盛り込んだ「インターネット広告掲載に関するガイドライン集」や「インターネット広告掲載トラフィックマニュアル」を発行している。また,両者は共同で「インターネット広告に関する基本用語集」を発行している。
IABがプライスウォーターハウスクーパーズ(PricewaterhouseCoopers,http://www.pwcglobal.com/)に委託してまとめている「インターネット広告収入報告書」(IAB Internet Advertising Revenue Report)によると,2009年のアメリカにおけるインターネット広告の市場規模は226億6,100万ドル。前年を3.4%下回った。インターネット広告費に占める業種別の比率は,小売業が20%,通信が16%,金融サービスが12%,自動車が11%,コンピューターが10%などとなっている。広告フォーマット別の比率は,検索連動型広告が47%,バナー広告が22%,クラシファイズ(不動産や求人などの案内広告)が10%などとなっている。検索連動型広告の比率が増加傾向にある。
また,カンターメディア(Kantar Media,http://www.kantarmediana.com/)の統計によると,アメリカの2009年の総広告費は前年比12.3%の減少となった。しかし,インターネット広告費(検索連動型広告を含まない)は前年比7.3%の成長を確保している。
四半期別(100万ドル) | 通年(100万ドル) | ||
1996年 | Q1 | 30 | 267 |
Q2 | 52 | ||
Q3 | 76 | ||
Q4 | 110 | ||
1997年 | Q1 | 130 | 907 |
Q2 | 214 | ||
Q3 | 227 | ||
Q4 | 336 | ||
1998年 | Q1 | 351 | 1,920 |
Q2 | 423 | ||
Q3 | 491 | ||
Q4 | 656 | ||
1999年 | Q1 | 693 | 4,621 |
Q2 | 934 | ||
Q3 | 1,217 | ||
Q4 | 1,777 | ||
2000年 | Q1 | 1,922 | 8,087 |
Q2 | 2,091 | ||
Q3 | 1,951 | ||
Q4 | 2,123 | ||
2001年 | Q1 | 1,872 | 7,134 |
Q2 | 1,848 | ||
Q3 | 1,773 | ||
Q4 | 1,641 | ||
2002年 | Q1 | 1,520 | 6,010 |
Q2 | 1,458 | ||
Q3 | 1,451 | ||
Q4 | 1,580 | ||
2003年 | Q1 | 1,632 | 7,267 |
Q2 | 1,660 | ||
Q3 | 1,793 | ||
Q4 | 2,182 | ||
2004年 | Q1 | 2,230 | 9,626 |
Q2 | 2,369 | ||
Q3 | 2,333 | ||
Q4 | 2,694 | ||
2005年 | Q1 | 2,802 | 12,542 |
Q2 | 2,985 | ||
Q3 | 3,147 | ||
Q4 | 3,608 | ||
2006年 | Q1 | 3,848 | 16,879 |
Q2 | 4,061 | ||
Q3 | 4,186 | ||
Q4 | 4,784 | ||
2007年 | Q1 | 4,899 | 21,206 |
Q2 | 5,094 | ||
Q3 | 5,267 | ||
Q4 | 5,946 | ||
2008年 | Q1 | 5,765 | 23,448 |
Q2 | 5,745 | ||
Q3 | 5,838 | ||
Q4 | 6,100 | ||
2009年 | Q1 | 5,468 | 22,661 |
Q2 | 5,432 | ||
Q3 | 5,550 | ||
Q4 | 6,261 |
2006年の日本のインターネット広告市場規模は,電通(http://www.dentsu.co.jp/)の「2009年(平成21年)日本の広告費」によると7,069億円(媒体費5,448億円・広告制作費1,621億円)。媒体費のうち,モバイル広告費は1,031億円,検索連動型広告費(パソコン向けのみ)は1,710億円と推計されている。インターネット広告費7,069億円は,新聞広告費より多く,総広告費5兆9,222億円のうちの11.9%にあたる。主要メディアの広告費の前年比は,テレビは89.8%,新聞は81.4%,雑誌は74.4%,ラジオは88.4%,インターネットは101.2%だった。インターネットの広告メディアとしての価値を高く評価する広告主が増加してきている。耐久消費財だけでなく食品や飲料といった一般消費財のキャンペーンでも,インターネット広告の活用が目立っている。検索連動型広告やビデオ広告など,さまざまな課題に対応する広告商品が充実してきたこともそれを支援している。
市場規模(億円) | |
1996年 | 16 |
1997年 | 60 |
1998年 | 114 |
1999年 | 241 |
2000年 | 590 |
2001年 | 735 |
2002年 | 845 |
2003年 | 1,183 |
2004年 | 1,814 |
2005年 | 2,808 |
2006年 | 3,630 |
2007年 * | 6,003 |
2008年 | 6,983 |
2009年 | 7,069 |
* 2007年からインターネット広告費の推定範囲を拡大している。
日本のインターネット広告市場の将来については,野村総合研究所(http://www.nri.co.jp/)が予測している。同社が2009年12月に発表した予測によると,インターネット広告費は2009年に6,345億円となり,2010年には6,982億円,2014年には9,004億円まで拡大するという。また,電通総研(http://dci.dentsu.co.jp/)が2007年4月に発表した予測によると,インターネット広告費は2011年に7,558億円にまで拡大するという。その内訳は,固定ネット広告費(バナー広告,ビデオ広告,電子メール広告など)が4,009億円,パソコン向け検索連動型広告が2,265億円,モバイル向け検索連動型広告が494億円,モバイル純広告が789億円。
2005年 (実績) |
2006年 (実績) |
2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | |
固定ネット広告 | 1,930 | 2,310 | 2,733 | 3,154 | 3,472 | 3,744 | 4,009 |
検索連動型広告 (パソコン向け) |
590 | 930 | 1,246 | 1,537 | 1,804 | 2,047 | 2,265 |
検索連動型広告 (モバイル向け) |
- | - | 87 | 167 | 262 | 371 | 494 |
モバイル純広告 | 288 | 390 | 469 | 576 | 665 | 736 | 789 |
合計 | 2,808 | 3,630 | 4,534 | 5,434 | 6,204 | 6,898 | 7,558 |
【広告】 楽天市場リアルタイムランキング